※PCゲーム「はーとふる彼氏」のパロ
※キャプテン(と喋らないけど速水と剣城くん)が鳥類です



うちのサッカー部のキャプテンはナゲキバトだ。
別に今のご時世、鳥類がサッカーやってたって誰も驚かないし、
雷門中に派遣されてきたシードだって同じように鳥類だ。おまけに化身も出す。
だから俺もびっくりしたのは最初だけで、今はもう慣れてしまった。
このハトが俺よりも豪勢な家に住んでたってピアノを弾いたって、
化身を出したって気が付いたら俺にぴったり寄り添ってたって何も思わない。

「どうしたんですか、キャプテン」

キャプテンの嘴が俺の人差し指と中指の間をつんつんとつついてくる。
ベンチの上に投げ出された俺の手に嘴を突っ込む姿は、まるで餌を啄んでいるかのようだ。

「天馬」
「駄目ですよキャプテン、ご飯はさっきあげたじゃないですか」
「違う」

首をひゅっと丸めて、手の甲に頭を擦り寄せてくる。ふわふわの羽毛が皮膚を撫でる。

「俺を撫でてくれ」

ナゲキバト特有の悲しげな鳴き声をあげて、キャプテンがそう強請ってくる。
ああもう、どうしようもないくらいに寂しがりなんだよな、この鳥。おまけに泣き虫。
俺は仕方ないから、キャプテンを腕の中に置いて、鳩胸を何回か撫でてあげた。
片手で掴めちゃいそうなくらいに細い体をしてるから、
握りつぶしちゃったりなんてしないように、大事に大事に抱き寄せた。

「てんま……」

キャプテンの声はもう悲しそうなんかじゃなくって、甘えるみたいな響きだった。
俺ははいはい、って言って、今度は目の周りを軽くきゅっきゅっと撫でる。
そうされるのが弱いみたいで、キャプテンはとろんと目を伏せて俺に身を預けてきた。

「なに? 神童またぐずってんの?」
「みたいです」

俺と同じ人間の浜野先輩の肩には、速水先輩がちょこんと止まっている。
速水先輩もハトなんだそうだ。初日に聞いた覚えがあるけど、種類は忘れた。
覚えてるのは、キャプテンがナゲキバトっていう種類の鳥だってことぐらい。
俺の周りを周遊しながら羽を広げて頭を下げていることがよくあるけど、
あれが求愛行動だという話は南沢先輩(人類)から聞いた後三秒で忘れたことにした。
さっきも擦り寄ってくるまでは頭上を旋回されていたなんて、俺は全然見ていない。

「好かれてんね」
「それは……嬉しいです」

かなり迷ったけど、嬉しい事にしておいた。
腕の中で気持ち良さそうに首を傾けているキャプテンは可愛いなって思うし。

「ほんとか、てんま」
「嬉しいですよ、だから眠いなら寝てください」
「ねむくないぞ」

いえ、相当眠そうですよ。
俺が溜め息をつくと、浜野先輩がにへらっと笑って俺を見下ろす。
もう何も言いたくなくて、俺はもう一回キャプテンの目の周囲を親指でぐりぐり撫でた。



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