「……お前、馬鹿だろ」
倉間の表情は険しかった。
照れと怒りが混ざり合った、色としては赤に近い顔色で天馬をきつく睨み付けている。
「俺、悪いことしたつもりはないです」
対する天馬は真剣に倉間を見据えて、言う。
「あんな風に吹っ飛ばされるところを見たら、特訓だってわかってても心配します。
……心配しすぎて、いつもならできることだって、できなくなります」
スカイブルーの目を伏せて、天馬はぎゅっと制服の裾を握り締める。
「約束破ったのは俺の方ですけど、言っちゃったのはしょうがないじゃないですか」
「……まぁ、誰も気付いてないみたいだったからな。今回だけは許す」
「ありがとうございます、先輩っ」
倉間の目がまた鋭くなり、歩くスピードが急に早くったので、
調子に乗りすぎたかな、と天馬は青い顔で背筋を正した。
いつもならここで手か足が出る。だが、今回は違った。
「今は2人っきりだろ」
振り返った倉間の顔が夕日に照らされて赤く染まる。いや、夕日だけではないだろうと思った。
だから天馬は笑う。笑って、彼の後を追いかけた。
「はい、倉間さんっ」
長く延びた影が、一つに繋がる。